犬に生肉を与えたい!与える量の目安とポイント

「犬に生肉を与えると栄養素を補うことが出来る」「アレルギー性皮膚炎が治った」など犬に生肉を与えるメリットについてお聞きになったことがある飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

一方で「食中毒が心配」「寄生虫は大丈夫なの?」と衛生面が気になる方も多いと思います。
そこで、今回は、肉の選び方や与える際の量など、犬に生肉を与えるときのポイントをお話します。

生肉を与えるメリット

生肉を与えることは、犬にとってどのようなメリットがあるのか見てみましょう。

食いつきが良くなる

特に、小型犬や病後の犬、老犬などは食欲が落ちやすく、今まで与えていたドライフードを食べなくなることがあります。

そんなとき、新鮮な肉を取り入れると、肉の脂肪の香りが食欲をそそり、食いつきが良くなることがあります。



消化・吸収をスムーズに行えるようになる


生肉には乳酸菌や酵素などが豊富に含まれており、それらを摂取することで、消化・吸収がスムーズになります。

添加物も入っていないため、胃腸への負担も少なく、便の臭いが減ったり、便秘が改善したりと便の状態が良くなることがあります。

また、胃腸の調子を整えることは、肌にも良い影響を与えます。
生肉を含む手作りフードを与えることで、腸の調子がよくなると、次第に皮膚の状態も改善されてきます。

 

生肉を与えるときの注意点


イヌ科の動物は、肉を食べるのに適した消化器管を持っており、生肉そのものが犬の健康に良いことは確かです。

しかしながら、ペットとして飼われている犬に生肉を与える際には、いくつか注意しなければならないことがあります。

 

衛生面には細心の注意を


生肉を与えることで、最も問題となるのが食中毒です。
「犬は人間よりも肉に存在する細菌に対して抵抗性がある」と言われることもありますが、科学的なデータには乏しいのが実情です。

人間の食事と同じくらい注意を払って与えるのが良いでしょう。

スーパーで販売されている加熱用の生肉を与えるのは危険です。
ペット用に殺菌処理されたもの、もしくは「馬刺し」や「ユッケ用に処理された牛肉」など人間の生食用として販売されている肉を選ぶようにしてください。

 

食物アレルギー


中には、鶏肉や牛肉など肉による食物アレルギーを発症している犬もいます。
もしもこうしたアレルギーを持っていた場合に、鶏肉や牛肉などの生肉を大量に与えてしまうことは、命の危険にも繋がります。

皮膚炎や頻繁な下痢など体に不調感が表れているときには、肉に対するアレルギーがないか、ほかの病気が隠れていることはないかなどを確認するために、一度動物病院を受診してください。

 

生で与えるときにおススメなのは馬肉


食品で「生食用の肉」として販売・提供が許可されているのは「馬刺し」と「厳密な規格基準の基で管理された牛肉(ユッケなど)」です。

(鳥刺しも、厳密には禁止されていませんが、カンピロバクターという細菌による食中毒が多く報告されていることから、人が生食することは推奨されていません)

牛肉だけでなく、馬刺しにも勿論、衛生管理の基準はありますが、牛肉で見られる腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌など食中毒の原因菌がいる確率がとても低いことから、牛肉ほど厳しい基準はありません。

馬刺しは、厚生労働省の指導により、寄生虫や細菌による食中毒のリスクを減らすため、-20℃48時間以上冷凍されたものが売られることになります。

また、馬肉は、鶏肉や牛肉アレルギーの犬でも食べることが出来ます。

馬肉は選んで買わない限り、ドライフードに含まれていることはまずないので「食物アレルギーのようだけれど、はっきり原因が特定出来ていない」という場合でも、安心して与えることが出来ます。

衛生面やアレルギーの観点から考えて、愛犬に一番安心して与えられるのは馬肉だと言えるでしょう。

 

骨は与えないで!


漫画などで、犬が骨付き肉を食べているのを見たことがある方も多いと思いますが、骨付きの肉は口の中や消化管を傷つけることがあり危険です。

骨は取り除いて与えるようにしましょう。

 

「肉だけ」にならないように気を付けて


野生のイヌ科動物は小動物を捕って食べ、野菜や果実、穀物などを食べることはありません。
しかし、ペットの犬は、内臓や骨を食べるわけではないので、生肉だけを食べていると、その分、ビタミンやミネラルが不足してしまいます。

とは言え、内臓や骨を与えることは、衛生面や安全面からおススメ出来ません。
家庭犬の場合は、野菜や穀物などで栄養を補うのが良いでしょう。

 

1回に与える肉の量は?

生肉を与える場合の適量についてお話します。

 

まずはトッピングから


現在、市販のドッグフードを与えている場合、いきなり大量の生肉を食べさせてしまうと、腸内環境の急激な変化によって下痢や嘔吐などを引き起こす可能性があります。

そこで、まずはいつも食べているフードに、生肉をトッピングすることから始めましょう。

トッピングする量の目安は、体重5キログラムあたり30グラム程度、ひき肉なら、大さじ2杯くらいです。
トッピングをする際には、市販のフードをいつもの3分の2くらいの量にしましょう。

これを何日か続け、体調に問題がないようであれば、フード全てを添加物などが入っていない「手作りごはん」に切り替えても良いでしょう。

 

全て手作りにし、生肉を与えるときの量の目安


手作りごはんの場合、生肉をどれくらい与えれば良いのでしょうか?

1回の量の目安としては、体重5kgあたり70g~100gです。

全体では60~70%が動物性食品、30~40%が野菜、穀類は10%以下となるのが理想です。
野菜や穀物は、ビタミンやミネラルなどの栄養面から加えますが、生野菜や生の穀物は消化管の短い犬には負担になるので、必ず茹でるなど火を通してください。

カルシウムは食餌で充分に摂取するのが難しいと言われており、サプリメントなども検討した方が良いかもしれません。

これらの食材の割合は厳密に守らなければいけないものではありません。

便や被毛の調子を見ながら1週間単位で考え、だいたいバランスよく与えられていて、健康状態に問題がなければ大丈夫です。

 

さいごに


衛生管理がきちんと行われているものであれば、犬に生肉を与えることは、理にかなっていると言えるでしょう。

ペット用の生肉を選ぶ際には、殺菌処理が適切に行われているか、よく確認し、安全なものを与えるようにしましょう。

バランスの良い食餌で、愛犬の健康を守ってあげたいですね。